2011年12月31日土曜日

タレント本と侮るなかれ『トリガー』

『トリガー1武村勇治/板倉俊之(実業之日本社)
 本作の原作はインパルスの板倉の小説で、刊行当時は劇団ひとりに始まるお笑い芸人の小説刊行ブームから数年たっていました。なので中身をちらりとも見ず、また芸人が本出したのかと冷ややかに一瞥しただけだったのですが、正直ポカした...今回その小説を原作とした本作が刊行されて自分の過ちに気づきました。


 原作小説のオビ「2028年、射殺許可法下の日本 拳銃ベレッタを手に、トリガーが『悪』を裁く!」
 漫画版のオビ「近未来、日本国 『射殺許可法』制定!!」


 こんなオビだったら当然、「なるほど必殺仕事人とかワイルド7みたいな内容なのかな、興味ないや」ってなるでしょ、うん、俺はわるくない。と言い訳はこのくらいにして「トリガー」の設定を説明させていただきます。


 20XX年日本は国王制になっていた。クーデターによって2代目の国王になり、よりよい体制を確立した冴木はそれでも減少しない犯罪件数を憂い「射殺許可法」を制定したのだった。「射殺許可法」とはうまく説明できません、オビのコピーが誤解を招く表現なのも仕方がないと思います。とにかく各都道府県に1人配置された「トリガー」が自分の裁量で『悪』を射殺するということで、その『悪』の定義が本作『トリガー』のキモなのです。




トリガーの射殺は読者の共感を誘ったりカタルシスを与えるたぐいのものではありません。作中でも国民は「射殺許可法」にドン引きです。


接客態度が悪いだけでこの後射殺です
 作画は『花の慶次』の外伝『義風堂々』の武村勇治。原哲夫風の絵が近未来かつ無法の世界である本作の設定にバッチリはまっています。しかし『悪』を徹底的に排除した国って他国にくらべて、どんな国になるのでしょうか。ある意味facebookやappleなんて悪人の作った会社だし、本作は色々なことを考えさせてくれる作品です。



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